"喜劇!駅前林道"創作野郎



陸奥酔助:「猫みたいな女だった」 第九回 :   初出掲載誌:月刊七味八珍:第三号


   ある時、女の部屋に行くと稲川淳二(タレント)によく似たネパール人が居た。
 女はポカラに行った時に、稲川氏の豪邸に泊めてもらい、かつ稲川氏が日本語を憶えたら一緒にネパールで暮らしてもいいなどと言って、毎日稲川氏のジープや象にただ乗りしていた。この話を聞いて、女と一緒に稲川邸に身を寄せようと提案したが稲川氏と女の双方から拒否されてしまった。いい話ではある。カレー食べ放題、ジープと象乗り放題。
 女は味噌汁をよそいながら「あなたは日本人のジョークが理解出来ないの、もっと頭がいいと思っていたわ、失望したよ」とケロリとしている。が、「このスープはおいしいです、けれどあなたの話おいしくないです、信じられません、あれから私必死で言葉勉強しました、お父さんお母さん待っています、明日ポカラに一緒に帰りましょう、教会がいいですか、ハネムーンは何処にしましょう」と見事に応酬する。

 水と油は一晩経過しても全然混ざり合う事は無かった。
 女は数日後不法就労者がいると稲川氏の事を役人に密告したので稲川氏は姿を消してしまった。 「結婚するなんて誰も言ってないもの、それに今はネパールより南米の方がいいわ」
 すっかりブラジルへ行く気になっている。

                                                                                                                つづく

                 


                     <写真と文は関係ありません>

     


Copyright ©
1989-2002 Ekimaerindo   All Rights Reserved.