"喜劇!駅前林道"創作野郎
英蟯虫(談):A
Making of 「ノルウェーの林」
こんな文書ファイルが出てきました。
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A Making of 「ノルウェーの林」 英蟯虫(談)
その年のクリスマス贈り物として密かに流行していたのが
赤と緑という上下巻で色の違う単行本で
それは当時ベストセラーになった村上春樹の小説「ノルゥエーの森」だった。
課長の部屋にはその単行本か文庫本かは忘れたが他にも村上春樹の本があった様に
記憶している。課長は当時からテニスをしていて「村上春樹=テニス=結構ミーハ
ー」とか単純に思ったものでした。まだどちらかというと田舎から出てきて頑張っ
て書いていた村上龍の方が好きで神戸で生まれ育ってノホホンとした感じの村上春
樹なんて読む気がしなかった。最近の村上龍は粗製濫造で読む気もしないが、、。
藤原新也は「Hanako」御用達の御用作家だと村上春樹の事を切り捨てていて両極に
位置すると思う。藤原新也は今年初めてアイルランドを舞台にした小説「ディング
ルの入江」を発表し私はかなり遅れて入手したがまだ最初のところで頓挫したまま
だ。現時点では小説家としての藤原新也に関して意見を述べる事は出来ない。
で村上春樹に話が戻る。当時課長に村上春樹と村上龍の違いを聞いたが私はまだ村
上龍の初期の作品を読んだだけでそれもかなり前に、だから課長の論説が的を得た
モノかどうか当時はわからなかった。記憶は曖昧だが課長の当時の論説は正しかっ
たと思う。
96年の真夏にバカンッアで人気の無いイタリアで我々は仕事をしていた。客先工
場に個人蔵書がありそこに村上春樹の単行本が数冊あった。いきなり「ノルウェイ
の森」に手を出そうか?と思ったがそれでは芸が無いので「国境の南、太陽の西」
だったかその思わせぶりなタイトルの単行本を選んでアパート型式の安ホテルに持
ち帰って合間合間に読んだ。そのタイトルは音楽のタイトルから取っただけだった
。次に「ノルウェイの森」を読んだ。西洋音楽にうとい自分はその時初めて「ノル
ウェイの森」がビートルズの曲名である事を知った。次の週末その曲が入ったビー
トルズのCDを買った。村上春樹の内面のある部分と自分の内面のある部分が類似し
ている様な気がした。その時に閃いた、そうパロディだ。そうして丁度それからし
ばらくして週末ノルウェーのオスロに飛ぶ機会があったのでこのダイナブックを持
ち込んで「ノルウェーの林」を宿で書き始めた。ノルウェーには森はあっても林は
ないと思う。ただのパロディだ。というよりそのイタリアの安ホテルで夜中に思い
ついたパロディをなんとか形にするためにオスロまで飛んだのだ。
風と潮 ‘98 秋季号より抜粋
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