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煩悩:只今時速80Km/H、東北西海岸を北上中
 99/8/21

 

はじめに
GWに東北三陸沿いを北上して以来、夏は西海岸を北上
してみようと心に決めていた。道は流れが悪いし、夏はきっ
と暑いだろうし、北海道と違って東北は何が魅力なの?と
言われてしまえばそれまでだが、ただ一つ言える事は東
北は山が無茶苦茶深いと言う事。今回は春には積雪で走
れなかった林道を伝って、オンロードの移動だけでは決し
て味わえない東北の魅力を旅してみようと言う魂胆なのだ
が、果たしてどうなる事やら。因みに8/10時点では梅雨明
け以来、東北方面は3週間以上真夏日が続いていた。

99/8/10  晴 後 雨 後 快晴 210Km(18601〜18811)
浦和〜所沢IC=大和PA

「時には星を眺め走る」
浦和を出たのが21:00過ぎ。
去年の春以来、いつも「始まりはいつも雨」で憂鬱な出発
だったのだが、今回は晴の夜空。振分鞄と寝袋、テントを
満載した春と変わらない旅姿で所沢ICから関越道に入る。
流れに乗って順調に飛ばしていると、不意に「高崎〜水上
雨天走行注意」の表示が、、、「おいおいまたかい」と急に
気持ちが曇天になる。

果たして荒川を越えて群馬県に入った途端、表示通りに
ホンマに雨が降り出して閉口。停まって合羽を着るのも面
倒で、そのまま100Km/Hペースで小雨の中を新潟に向け
北上。赤城高原PAで初めて合羽を着込み、ガスチャージ
とする。

その後は関越トンネル迄、小雨と霧にやられ80Km/Hにペ
ースガタ落ちで長い関越トンネルに入る、只管長いトンネ
ルを抜けると、そこは「雪国」、、、、、であろう筈も無く、そ
こには満天の星空が広がっていた。

越後湯沢の長い長い坂道を下るとそこは新潟平野、圧倒
的に交通量の少ない中を80Km/Hペースで、星を散りば
めた様な空を時々眺めながら走り、大和PA着。荷物を解
くのが面倒なので、マットだけを取り出し、その辺りに転が
っていたベンチで眠りについたのだった。

99/8/11  快晴 一時 曇 後 晴 405Km(18811〜19216)
大和PA=小出IC〜栃尾〜新発田〜村上

〜朝日スーパー林道〜村上〜温海〜酒田〜遊佐


「青、緑、白しかない風景」
6:00に起床、既に太陽は東の空からギラギラ照り始めてい
る。コーヒーを飲むのもそこそこに、7:00前に出発。小出IC
で関越道を下り、R252を目指すも早くも道に迷い、早朝の
田んぼの畦道をウロウロ。ふと気づくと田んぼから農作業
のオッサンが不思議そうにこっちを見ていた。スンマセン
なぁ。県道を通って漸くR252に出る、暫く守門方面に走り、
R290にスイッチ、この国道から本当の北上の開始だ。

早朝の田舎道はホンマにな〜んも走っていない。ごくたま
に通勤の車とかトラックなんかが走るのみ、右も左も畑と田
んぼの中をR290は緩やかに起伏と中速コーナーを繰り返
しながら、ひたすら北に向かう。今はただ、空の青と木々の
緑、そして真っ白な真夏の雲、白か灰色か見分けの付かな
いくたびれた舗装路しか私の目には飛び込んでこない。
果たして田舎道の色の三原色はこの色しか無いのか?そ
んな色の中を青紫のRMXはパランパランと2スト音を立て
ながら、ひたすら北上を続けるのであった。と書けば何だ
か気持ち良さそうやけど、実際はジリジリ照りつける太陽
光線に、乗っている本人はすっかりグロッキー気味で大
変やったんやけど。まあ良しとしておこう。

栃尾を過ぎ、R290は北東に進路を変える。途中、人面峠
と言う不気味な名前の峠を越える。どうやら人面と言う地
名から来ているみたいだが、じゃあここにいる犬は人面犬、
魚は人面魚なんやろか?等と阿呆な事をず〜と考えてい
る私は人面煩悩。

9:00過ぎ、日が益々高くなり喉も乾くので通りかかったコン
ビニ前でサンドイッチ&コーヒーの朝飯。そこからも只管R
290で北上を続け、新発田を過ぎ朝日スーパー林道の入
口になる村上に10:30到着。余りの暑さにここでも、駅前
でおーいお茶緑茶を、がぶ飲みするオッサンライダーの
姿があった。私なんやけどね、それは。

「嗚呼残念、なかなか山形県に入れない事実」
村上で喉を潤し、この先長い林道の終点までは飯も食え
ないだろうと、カロリーメイト迄買い求め準備は万端。R7か
ら直ぐに朝日スーパー林道に入る。国道から数キロの所
でデカデカと「朝日スーパー林道」と看板が有り、その横
に、これもデカデカと「暫くの間、通行禁止、山形県」と標
識があったのは目にしていたのだが「ホンマにそうかぁ?
ただ通らせたくないだけちゃうんか?」と疑心暗鬼のまま
「行けなくなればその時」とあまり深く、考えなかった。

風景は今迄と全く変わらない青、緑、白。国道と違うのは道
が一車線になり、そして低速のブラインドコーナーが延々と
続く事のみ。対向車は多少有るものの、段々高度を上げ、
谷に作ってあるダム湖を見下ろす様に道が捲き始め、山の
中に入って行くと対向車に出会う事も無くなった。ただ、林
道の癖にダートが出てくる雰囲気は一向になし。「果たして
ダートは県境まで現われないのか?」と言う不満と、途中か
らの余りの対向車の無さに「このままホンマに通行止めなん
ちゃうか?」と言う不安が混ざり始めた村上からの約35Km地
点で、漸く道はダートになる。

久しぶり(春の青森のダート県道以来)のダート道で、しかも
フラットダート。久方ぶりのアクセルワイドオープンでリアタイ
ヤを滑らせながらRMXは加速していく、、、尾根沿いに出る
と、朝日岳を主峰とする山々がすぐ近くに見え、「遠くに来
たなぁ」と実感。

しかしながら、その気持ち良さも長くは続かなかった。
「県境」と書かれた新潟山形の県境の峠を過ぎ暫く山形県
側に下ると、なっナントこれ以上は一歩も進ませないぞ、と
言わんばかりのゲートにいきなり出くわす。時間は13:00。
結局村上から丁度50Kmの地点、山形県入口で朝日スー
パー林道は通行止なのであった。そりゃあ確かにデカデ
カと「通行禁止」の看板は出ていたから嘘はついていない
んやが、、「そりゃぁ無いぜよ山形県」。

「Remember 8years ago」
今までの快晴も、峠に着くと時を同じくして、一点俄に黒く
曇り出す。「降るのかぁ?」天気にまで、見放されそうにな
りながら、落胆した気持ちで再び村上まで下りる。延々登
ってきたダートを下りていくのは辛い。だが、ここから北上
ルートを立て直す方がもっと辛い。幸い下りは一気に下り
たので、再びの村上には14:00に到着できた。

こんな展開は考えていなかったので体制建て直しの為と
昼飯の為に、道の駅に入ってトンカツ定食を食べながら
考えるも、時間も時間やし、R7の北上しか案は無し。
仕方なく、今日の目的地、山形県遊佐まで、出来る限り
海沿いにR7を北上して行こうと考えたのだが、これが実
は8年前のオオカワ殿、Killer君と走った「秋田でもう走り
飽きた」ツーリングのルートとほぼ一緒と気づくのにはそ
う時間は掛からなかった。

村上からR7を北上し山形県入りして直ぐ、坂の途中のスタ
ンドでガスチャージをしている時に、不意に既視感に襲わ
れる。「ここは以前来たような…」と思っていると、8年前にも
このスタンドでガスを入れた事を何となく思い出した。
「そうかあの時にも此処の景色を見て憶えてるんや」。

こうなるともう8年前を思い出しながら走るのみ。
あの頃は、宝塚からただ夜中じゅう走り続けて富山で夜が
明け、その日の丁度昼頃酒田の海沿いを西さんに借りた
乗り慣れないCBX750で走ったんだ等と思い出しながら、
夕方の16:00過ぎに酒田市内を通過。天気も再び快晴な
んで海側に出て途中で晩飯の食材を買い求め、この日の
泊地、遊佐西浜キャンプ場についたのは18:00前だった。
キャンプ場は家族連れのオートキャンパーで賑わってい
たが、たまたま平塚から単車に乗って来た人が「こっち空
いてるよ」と声を掛けてくれ、テントを張る。キャンプ場内の
温泉に入って一息ついて、この夜は平塚から250のスクー
タで来た兄ちゃんと、東京からレイドに乗って来た兄ちゃん
と3人でビールを飲み交わした。22:00、酔っ払って就寝。

99/8/12  快晴 336Km(19216〜19552)
遊佐〜鳥海ブルーライン〜象潟〜秋田〜
 男鹿〜入道崎〜大潟〜能代〜岩崎〜行合崎

「Remember 8years agoU」
朝5:00起床。飲みすぎたのかちょっと頭が痛い。
天気は曇り、けど朝飯のクラッカーとコーヒを流し込んでい
る間に雲が晴れてきた。案の定、撤収に2時間近くかけ、
7:00丁度、「そろそろ街に帰る」と言う平塚の人、「もう少し
ユックリして行きます」と言う東京の人と別れ鳥海ブルーラ
インを目指す。ものの5分も走らない間に鳥海ブルーライ
ン入口着。グローブを填め直し、本格的に今旅初の舗装
路ワインディングに突入。聞いていたとおり走り始めは高
速コーナ―の連続。段々高度を上げるに従い、中速コー
ナーが増えやがてそのコーナーも低速でしか抜けられな
いヘアピンが連続する様になる。そんなワインディングを
自分のペースでRMXを右に左に翻しつつ登って行くのが
何と気持ちの良いモノか!たまにトロい地元の車が居る以
外は殆どが自分のペースで走れるのが気に入った。今度
来る時は是非オンロードで来たいもんや。

登り切った所が鉾立展望台、展望台からは下から見る鳥
海山のそのなだらかな山容とは対照的な、深いガレ谷が
山麓に堅・ゥって何百、否何千メートルにも渡って続いてい
るのが見え、思わず足がすくんでしまった。

鳥海ブルーラインを早々に下り、麓の象潟迄下りてくると
一言、暑い。朝の8:00過ぎだと言うのに既に道路情報板
の気温表示は30℃を越えているのだ。汗が滴り落ち、万
が一の転倒に備え長袖を着なければ安心できない自分
が、なんて不器用なんやと一人で笑ってしまう。

そんな余裕が有るのも、実は今日は只管R7をメインに国
道を北上するオンロードツーリングだからだ。カンカンと
照り始めた午前の太陽の下、象潟から金浦、西目、本荘
と、決して速いとは言えない60〜80KmのペースでR7は
流れていく。けど、こういった速さで適度な数の車の後ろ
をついていくのもまたエエもんや。この速度だと、8年前
夜中じゅう走り通して、それでもまだ集合を約束した秋
田駅までは気が遠くなりそうな程に遠いと感じながら走
っていた時は、自分が如何に何も見ていなかったかが
良く解る。

本荘から秋田に向かう途中、海側に「ロケット発祥の地」と
言う表示を見つけた。行ってみるとたんなるチンケな石碑
で写真も撮る気がしなかったが、こんなのを見つけられる
のもこのペース(80Km/H)で巡航しているからだろう。8年
前に目を吊り上げて走っていた頃には、こんな小さな看
板なんか決して見えなかったんやから。

北国の短い夏を楽しむように、海水浴客がチラホラ遊んで
いる海岸沿(湘南なんかと大違い!の人の少なさ)を北上
を続け、秋田市内を抜けたのが10:30過ぎ。途中道の駅
で休憩をしていよいよ男鹿半島に入る。空は快晴だが海
からの風がキツい。ここでも8年前を思い出す。あの時は
天気が雨で、海岸沿を3人共、直線ハングオン状態で走
ったものやったなぁ、と。

男鹿市内で、8年前に勝手に待合室で野宿をしていて翌
朝駅長に「おめえら、いつまでここに居んだぁ」と駅長に怒
られた羽立駅に立ち寄る。あの頃と雰囲気は全く変わって
いなかったけど、駅前には何と小さなスーパーが出来てい
た。「あの頃はスーパーも無くて国道まで買い出しに行った
んやなぁ」と一人、オッサンは感慨に浸るのであった。

男鹿市内を抜け、いよいよ男鹿半島入道崎に向かう。
道はR101から離れ、県道の狭い二車線路に突入。今迄の
海沿いの平坦路から断崖をウネウネと曲がりながら上って
行く、まるで7月の中頃に行った、佐渡島の北部とそっくり
だ。その中でも自分のペース(80Km/H)はキープしながら、
元気良く走り、丁度12:00、男鹿半島の先端、入道崎着。

入道崎は灯台の廻りが全面芝生で、遠くから見た感じで
は雰囲気は決して悪くはなかったが、近づいてみてガック
シ。灯台の道を挟んで向い側には、土産物屋が立ち並び、
秋田名物ナマハゲのチンケな人形が置かれ、聞いた事も
無いようなド演歌が延々ガナリ立てられている。オマケに
観光客がごった返す、正に正統派純日本的観光地と化し
ていた。こんな所を目指して来たのかと思うと、自分が妙
に情けなく、直ぐに寒風山に向けて出発したい衝動に駆
られるも、腹も減ったし、折角食堂が有るのだからと気を
持ち直して、何件かある中の一件の食堂に入り「ウニ丼」
(\1500)を奮発。せめて美味い物でも食って気を取りなお
そうとしたが、一口食ってみて再びガックシ。苦いのかしょ
っぱいのか、舌に変な刺激のある代物で名物に美味い物
無しを実感。もう金輪際、絶対にウニ丼なんか食うものか。

気分がすっかりメゲたので、13:00早々に入道崎を退散。
幸い男鹿半島北側の道は、南側と違い快適ロード、快調
に寒風山に向かって飛ばすも、十数台連なって走る群馬
ナンバーのマスツーリング集団に追いつきペースダウン。
こいつらその殆どが、大排気量車に乗っているクセに、
70Km/H位のペースで延々走っていく。しかも抜かそうに
もご丁寧にも隊列を組んだ千鳥走行なので、荷物満載の
250オフ車では一気に抜かすのもままならない。
内心「くそっ」と悪態つきながら付いていくも、延々こんな
隊列の後ろを走るのが嫌になり、丁度現われた寒風山と
大潟村への分岐で隊列が寒風山に向かうのを横目に見
ながら、残念だが寒風山は諦め、大潟に向かう事にした。

「念願の青森県突入」
大潟村は、その昔日本第二位の湖だった八郎潟を国策
で埋め立てたもの。その干拓政策云々の話は抜きにして、
その広さはやはり地図で見るだけでは想像できなかった
代物だった。道は舗装路も田んぼの中の畦道も、ただひ
たすら真っ直ぐで、途中見つけた真っ直ぐダートの畦道
にRMXを乗り入れ一瞬のダートを楽しむ。この島の様な
大潟村には北緯40度線と東経140度線の交会点が有る
と言うので行ってみたが、田んぼのど真ん中のダート道
の脇にモニュメントがポツンと立っているだけのものだっ
た。廻りの風景を見ても絵にはならない単なるチンケな
碑なんやけど、折角だから写真を1枚、カメラに収める。

大潟村を後に、北上を急ぐ。
昨日同様快晴で、申し分無い天候なのだが海岸沿は風が
きつい。R7で北上を続けていると道の両脇に防風の為の可
動式のシェルターみたいな物をよく見かけるようになる。
風の季節になれば、天候の最も安定している夏のこの時期
からは、とても想像も付かない暴風が吹くのだろうこの北の
海岸には。

15:00。木材の街、能代で今日の夜の食材を買い求め、後
は今日の泊地を決める為にR101に道をスイッチし北上す
るのみとなる。R7と比べ、R101は交通量が極端に少なくな
り、海岸沿を快適に走るようになる。最初は遠くに見えてい
た東側の山並みが白神山地で、その山々がグッと近づい
てきたと思っていたら遂に青森県に突入。風景は青森県
独特の鄙びた雰囲気となり、ローカル線、五能線の二両
編成の気動車と出会ったりしながら、この鄙びた雰囲気を
満喫。

岩崎村から中山峠と言う小さな峠を林道の様な舗装路で
越え、小さな半島をショーットカットして深浦町に出る。こ
の日の泊地を町はずれの岬の突端にあった、雰囲気の
良い行合崎キャンプ場にテントを張った。

夕方、RMXに乗ってちょっと南に下った所に有る黄金崎
不老不死温泉に入りに行く。温泉は直ぐ横が海と言うシ
チュエーションの露天風呂で、何度か雑誌の写真で見た
事があったので、果たして実物を見てもこんなモノか?と
言う感想しか持てなかった。この風呂、夕日が最高に美し
く見えると言う事で有名だそうで、地元以外からもかなりの
人が浸かりに来ていたみたいだが、私はのぼせるのが嫌
で早々に引き上げた。

99/8/13 晴 一時 雨 後 晴 299Km(19552〜19851)
行合崎〜弘西林道(白神ライン)〜赤石川林道〜鯵ヶ沢〜
 小泊〜龍飛岬〜中里〜五所川原〜弘前〜大鰐温泉

「白神山地を走る」
4:30起床、天気は今日も晴だ。
テントを撤収し6:30に行合崎を後にする。昨日も通った中
山峠を戻り、岩崎村から直ぐに「白神ライン」と碑の立って
いる角を曲がり、弘西林道に入る。初めは舗装の白神ラ
インこと弘西林道は緑の白神山地に挟まれた狭い谷の
中に拓かれた道。谷底から見上げる緑と、青のコントラス
トが非常に美しい。そんな景色の中、岩崎村から十数Km
来た地点で道はダートになる。

白神ラインと言う名が付けられている事からも解るように、
この林道は観光用としても使われている林道だが、林道
としては普通の狭さ、そして路面も若干整備はされてい
るが、起伏が激しくブラインドコーナーが続く。そんな中、
全くフツーの1BOX車が走っていたり、対向車が不意に
現われたりするので、注意が必要だ。

道が山を捲き、やがて道路は南側の尾根に出ると、向白
神岳の山容が現われ、白神山地の真ん中に入った事を
知る。あの山の頂上で僅か1200mそこそこなので、今私が
走っている道自体は標高にして300m〜500m前後だろう
か?見る限りは本当に深いド山の中なんやけど。

峠を一つ越え、道は下りに差し掛かる。結構起伏の有る
道で登りは良いが、下りは擦り減ったタイヤも手伝って、
ただ滑り降りていく様な気がして恐かった。そうこうする内
再び登りが始まり登り切った地点が天狗峠。ここで一服。
時刻は8:00。峠には「熊注意」の看板がちらほら。

ここからは一気にと言うかズルズルと下り、追良瀬川を大
きな橋で渡る。暫く行くと白神山地を北上する赤石川林
道との分岐が出てきたので赤石川林道にスイッチ。白神
山地を貫いて最終的には鯵ヶ沢から日本海に注ぎ込む
赤石川沿いに走るこの林道は、只管フラットな走りやす
い林道で、ガンガン飛ばして距離を稼ぐ。途中、くろくま
の滝と言う滝を発見。広場に単車を置いて歩く事約10分
でくろくまの滝に到着。推定約40m程の滝の真下まで行
って小休止。滝から吹いてくる涼しい風が心地よかった。

「雨の龍飛岬、階段国道」
赤石川林道を抜けると、田んぼの中の県道に出た。
暫く走って鯵ヶ沢町に出、R101に再び合流。早朝から
の林道走行で腹が減ったので、海沿いに出た所でおに
ぎりをパクつく。ここからは、この旅の前半の目的地であ
る龍飛岬を目指すのみとなった。R101から屏風山広域
農道と言う津軽半島の最西端を走る農道に入り、一気
に龍飛岬に向かう。

龍飛岬は苦い思い出の地だ。昨年の春GW、春雷とも言
える天候最悪の中、龍飛岬数Km手前で台風並みの強
風の為転倒、単車は不動状態になり泣く泣く帰ってきた
と言う苦い思い出が有る。

今年は天気の心配の無い夏に照準を当てた訳だが、広
域農道で北上して車力村に入った辺りから、急に天気が
曇り始めた。今から向かう龍飛の方角の北の空には、黒
い雨雲とも思える雲が、湧き出して来ている。雲が出て
来ると共に風も強くなり始めた様だ、十三湖岸に出ると
一層風が強くなり始め、その風の強さに比例して不安も
一層つよくなり始める。

時間は11:00。このまま龍飛迄、風のきつい海沿いを詰
めるか、十三湖から一旦津軽半島を横切って東の方か
ら龍飛を目指すか、単車を停めて悩んでみるも良い案は
浮かばない。結果「ええいそのまま龍泊ラインを行ってし
まえ」と決心して、昨年春の恨みを晴らすべく西側から海
沿いに上がっていく事を決意。小泊から通称龍泊ライン
R339を北上して行く。

昨年の春は降りしきる雨の中、この道を登っていて風に
吹かれた。あの時の陰鬱だった気持ちを思い出しながら
80Km/Hペースで走り続け、風のきつい海沿いを詰める。
やがて道は東に進路を取り、きつい勾配を上がる。今ま
で晴れていたのに雲がみるみる内に行く手を遮る様に次
々に湧き出てきて、ついに雨も降り出した。余程、龍飛
岬と私は相性が悪いらしい。

霧も出て視界の悪い中、峠と思しき所を越え道はやがて
下りに差し掛かる。「あの時もこんな霧で、このあたりで風
に吹かれたんだ」と思って現場を目で探しながら走るの
だが、同じ様な風景が続き、結局「ここ!」と断定はでき
なかった。

龍飛の風力発電所が見え始め、無事山を下りてきた事
を実感。「龍飛岬  左」の表示に従い左折して灯台に向
かう。12:00丁度、龍飛岬灯台に到着。灯台には観光客
が山程居て、津軽半島の最果てと言うイメージは薄い。
「何や単なる観光地やんけ。」早々に岬を下り、階段国
道の入口を見に行く。灯台の真下に龍飛の集落が有り、
そこにR339、「階段国道」は有った。どうやら昔、国道認
定をした時に国の役人が間違えて、灯台までの道を国
道認定してしまったのがこの階段国道だとか。何の事は
無い民家と民家の間の路地で、そこに「R339」の標識が
立っているのはちょっと面白い光景だったが、たかがそ
れだけの事であった。

「君子、雨雲に近寄らず」
龍飛を13:00丁度に出て、その瞬間からこの旅は折り返
しの南下の旅に変わる。小雨の降る中、三厩村の中心
部、昨年北海道に渡る時に利用したフェリー乗り場の横
を通り、灰色の海沿いを今別に向かう。今別から太宰治
の生家の有る中里方面への県道にスイッチ。

天気は龍飛を折返してからずっと小雨が続いている。
幸い合羽を着るまでも無い程度の雨だが、太平洋側に低
気圧でも発生しているのであろうか、強い東風が吹きつけ、
風と小雨の攻撃に晩の野宿が気になり始める。津軽今別
の道の駅に寄り携帯電話で青森県の今夜の天気予報を
聞いてみると、今夜は夕方から雨だと言うではないか。
「おいおいそりゃないぜ」。この旅に出る迄は東北方面は
2週間程連続の熱帯夜で、雨なんか殆ど降っていなかっ
たと言うのに、、、、

だが、とりあえず太宰の生家の有る中里町に出ると、雲の
間から晴れ間が見え出す。五所川原に出る迄の間、目の
前に広がる空の雲の行く手を観察しながら走っていると、
どうやら岩木山の方は山全体を雲が覆い、天気が悪くな
りそうだ、逆に晴れ間が見えているのは八甲田の方だろ
うか。

弘前の手前まで来て、蕎麦屋で昼飯を摂りながら、ルー
ト検索。予定では岩木山を目指していたのだが、あの岩
木山の様子ならば、夜に雨が来てもおかしくはないだろ
う。どうせ風任せみたいな旅なんだから、計画通りに進め
る必要もないし、それよりも快適な泊地に泊まりたいと言
う気持ちの方が強くなり、雲の様子を見てなるべく雨の
来なさそうな方向に向かう事にする。店を出て雲の様子
を見て地図と照合してみると、どうやら秋田に近い大鰐
温泉の方向は雲が全く出ていない様子、よって大鰐温
泉を泊地にする事に決定。

弘前から大鰐温泉迄はものの30分も掛からなかった。
大鰐温泉駅前で、大鰐町営野営場の場所を確認。町の
直ぐ裏にスキー場が有って、その真ん中にその野営場は
有った。誰も来ないようなキャンプ場だからか、テントは僅
かに数張りしかない「ラッキー!!」。16:00すぎにテントを
張り、共同温泉にて今日も温泉入り。テントに戻って管理
人に金を払いに行くと200円だった。金を払ってから天気
の話で暫く話し込む。青森は梅雨明け後、殆ど雨らしい
雨が降っていない様で、「今年のリンゴの出来に影響が
無ければエエんだけんど」との事。それを聞いて、自分の
行く先の天気が晴れればそれでエエと言う極楽蜻蛉をち
ょっと恥じた。

99/8/14  快晴 後 曇 後 雨 353Km(19851〜20204)
大鰐温泉〜大館〜比内森吉林道〜比立内〜

河北林道〜河辺〜大曲〜横手〜新庄〜尾花沢


「延々、林道を追いかけて」
4:30起床。夜中に雨が降る事も無く、晴れの朝を迎えた。
朝飯を摂って、6:30出発。天気は心配した程ではなく、
青空が広がっている。R7に乗り南下、秋田の大館に向か
う。早朝の国道は交通量も少なく、流れも速く、ホンマ快
適。大館でガスチャージ、スタンドのオッサンはRMXのナ
ンバーを見て「神戸からぁ?遠いなぁ」と言う。こうやって
いつも私は地方の人間を騙している。

大館からR103にスイッチ、比内町に向かう。
県道に入り、目指す林道の入口が解らず、果たしてその
道が目指す道なのか否か、田んぼの中の道で地図を広
げているとCRMがその方向に走り去っていった。その道
が比内林道と確信して、同じ方向にRMXのハンドルを向
ける。暫くして道は1車線になり山の中に入り始める。
狭くブラインドコーナーの多いその道は、林道の雰囲気
がプンプンしてはいるが、一向にダートが現われない。
途中で停まっていた先程のCRMを追い抜き、そのまま
暫く走ると名も無い峠を越える。後ろをついてきたCRM
に道を譲り、この先ホンマにダートが有るのかどうか疑心
暗鬼のままに坂を登っていくと、展望台の様な所に到着。
先程のCRMが停まっていた。乗っていたのは農業用の
ツナギを着た地元の単車乗りで、「確か神戸ナンバーだ
ったよなぁ」と話し掛けてきた。

この農業青年は地元の人で、今日は盆休みなので久し
ぶりに山の中を走りに来たと言う。「ここはダートちゃうん
ですか?」と聞くと「あぁ十年前迄はそだったけんど」やっ
て。こんな純朴な青年を騙す積もりはないので、実は浦
和から来たと言う事を最後にバラしておいた。

ダートが無いとすればこの道は早く下りるだけ、暫くCRM
の後をついていき、途中でCRMは分岐を左へ、私は真っ
直ぐ、ここで別れる。道はやがて森吉町からR105に出た。
R105を数キロ角館方面に下った所が、河北林道の入口。
暫く進んでいくと、漸く今日初めてのダート突入。嬉しくて
アクセルオープンで快調に走りたいが、実は荷物満載で
しかもタイヤがツルツル坊主なので、上手く走れないのが
現実なんやけど。

この林道、今時珍しい県道認定のダートで、そのせいか
整備は行き届いていて恐らく路面が凸凹のところには、
ご丁寧にバラスを一面に敷き詰めているのだが、二輪に
とってはそれはお節介と言うもの。何せ前輪が取られ走り
にくくて仕方が無い。

入口から丁度10Kmちょと来た所で、熊見峠と言う峠に到着。
時間は10:30丁度。暫くこの峠で休んでいると山の中から鈴
を鳴らしながらオッサンが下りてきた。お互い顔を見あわせ
て「こんにちは〜」。実はこの人、キノコ取りに来た地元の農
家のオッサンで、良い天気が続いて、秋田では今年は米の
育ちが絶好調と言う。因みにキノコに関しては「んにゃぁ、キ
ノコはまんずまんずです」との事。別れ際に今日取ったと言
うでかい舞茸を見せてくれた。

ここからは一気にダートを下りていくのみ。そして丁度、RM
Xが3年前から乗り始めて総走行距離20000Kmを迎えた。
ダートで20000Kmを迎えるとは運が良い。記念に山の中で
記念写真を1枚。

「今年も、大雨の恐怖を味わう」
入口から32Kmの地点でダートが切れ、舗装路になりやが
て道はR13に合流。時間は11:30、午後は淡々と今日の目
的地栗駒山に向かうのみだったが、大曲を過ぎた辺りから
天気が一転して曇り始める、行く先の雲行きが見てはっき
りと解る程、真っ黒けなのだ。昼なので、ラーメン屋に寄っ
てテレビを見て初めて神奈川でキャンプ客が川に流され
たニュースを知る。さらい天気予報では東北南部は大雨
が予想されると言うではないか。

「おいおい何てこったぁ」。飯を食った後も、延々地図を見
て、携帯電話で新潟、山形、秋田、宮城、福島、岩手の
天気予報を聞くも、どこも明朝にかけ雨。ところによっては
大雨だと言う。これでは栗駒山なんか絶対に雨やないか。

とりあえず、あまり南下せずに、しかも翌朝もテントで停滞に
なった時の事も考え、山の中でなく、洪水の心配も無い平
野地のキャンプ場を探し、山形の尾花沢の徳良湖キャンプ
場に今夜の泊地を求める事に決めた。

R13を下っていく内にも、どんどん晴れ間が無くなっていき、
すっかり曇空に、、、、、秋田と山形の県境である雄勝峠を
越えるとすっかり雨雲の下を走る羽目になる、何時、雨が
降り出すのか不安な中、真室川、新庄と通り過ぎ、尾花沢
に入った途端、ほぼ同時に雨が降り出す。

16:00にキャンプ場につくと、こんな天気やのに結構混み合
っていた。駐車場には懐かしいTX650が停めてあったので、
単車乗りも泊まっているんだと判断。適当な場所にテントを
張ろうとしたら、そのTXの持ち主らしき兄ちゃんが声を掛け
て来たので、その近所にテントと雨避けにタープも張らして
貰い大雨に備える事に、、、、買い出しも翌日の朝の停滞も
考え、食料と酒を多目に買い求めた。

19:00頃、晩飯のヤキソバを作ってビールを飲みながらラジ
オで天気予報を聞き終えた所に、TXの兄ちゃんがビールと
ツマミを持って訪ねてきたので、タープの下に迎え入れ、イ
スを貸してやった。

この人は何と埼玉の岩槻の人で、大工をやっていると言う。
まだ24歳との事で、今回がTXで初の遠乗りなんだと。何故
若いのに旧車なのかは聞かなかったが、結構話せる人で、
その夜はお互いに雨が降って暇だったのか、延々単車の
話で盛り上がったが、雨と風が強くなり始めた22:30、ビール
2本と、梅酒1本で結構酔っ払った所で、宴会はお開きとな
った。

99/8/15 雨 後 曇 後 晴 後 雨 224Km(20204〜20428)
尾花沢〜山形〜山形蔵王〜南陽〜
 米沢〜喜多方〜裏磐梯〜猪苗代湖

「雨、停滞。束の間の晴天、移動。そしてまた雨」
深夜に大雨が降っていたのには気づいていた。幸い林間
に張っているので雨には耐えられる事は確信していたが、
心配なのは風の方だ。タープが飛ばされないか一晩中気
が気でなかった。

5:30、一応目覚ましの音で目覚める。相変わらず雨なん
で再びフテ寝。ラジオの天気予報を聞きながらウトウト、、
6:30、再び目覚める。雨の降り方は変わらず、寝ていても
仕方が無いのでパックの米と味噌汁を作って朝飯を食う。
7:30、コーヒーを飲みながら外の状況を見ていたら、雲の
切れ間に青空がちらほら。改めてラジオで天気予報を聞く
と、熱帯低気圧は新潟方面の日本海上に去ったとか、因
みに南の福島の天気は、低気圧の影響で不安定ながらも
午後から晴れるらしい。
8:00、雨が小降りになり始めた所で、テントの撤収を開始。
途中、突然雨が降り出したり、「今日は秋田に行く」と言う
TXの兄ちゃんと話をしながらの撤収準備で、時間が掛か
り11:00前にやっと出発となった。

曇ってはいるが、時々雨の混じる不安定な天気の中、山
形市内には12:00前に入った。今日はオンロードの移動
のみなので、行程を考えても単調そのもの、当初は雨だ
ろうと思い向かう気も無かった蔵王方面にフラフラと向かう。

狭い県道を登り、西蔵王高原ラインに入り暫く走ると、一
面の霧、霧、霧。ペースもガタ落ちで、景色なんか何も見
えない。こんな所を走っていても仕方が無いので、下りる
事を決意。蔵王ラインを走って上山市に下りると、また晴
の天気でちょっと拍子抜け。

上山からはひたすら国道を移動。途中昼飯を摂ったりし
ながら、漸く米沢まで下りてきた。天候はその間にも、晴
から曇り、そして米沢辺りでは雨雲が出て今にも降り出し
そうな雰囲気だが、ここ迄下ってくると「流石に帰ってきた
なぁ」と言う気持ちが強くなる。

R121の大峠トンネルを越えて福島県入り。このルートは今
年のGWとほぼ同じルートなので、単調そのもの。途中、道
の駅喜多の郷で温泉に入り、後は猪苗代か桧原湖辺りで
泊地を決めるだけだったが、裏磐梯を経由して行く事にし
たが、裏磐梯は全くの観光地で食材を買い求める事がで
きない。そうこうする内、再び雨が降り出し、結局猪苗代湖
迄下りる事に、、、、、猪苗代湖天神浜の手前数百mの所
で局地的な大雨に逢い、単車を道端に放棄して雨宿りせ
ねばならない状況にも遭遇。

雨の中、18:00過ぎに漸く天神浜に到着するも、青森や山
形のキャンプ場とは違い、林間の暗い汚いキャンプ場の
癖に\1500も踏んだくられて、この旅の最後の夜は悲惨な
夜となった。「福島県は東北なんかじゃない」と一言付け
加えておこう。

99/8/16 曇 後 晴 246Km(20428〜20674)
猪苗代湖〜御霊櫃峠〜白河〜宇都宮〜春日部〜浦和

「旅の最後は国道流浪」
旅の最終日。天気は曇り、7:00に出発。今日はただ帰るの
み。猪苗代湖から有名な御霊櫃峠に登る、峠までの途中
は数Kmのダート道でこの旅で最後のダートを楽しむ。

峠の下り、郡山方面は舗装路の坂道。
ホンマにここからはただ帰るのみだが、ただ高速で帰るの
も面白くないので、白河からR4でひたすら帰る事にする。
福島県から栃木県に入り、宇都宮あたりで広い広い関東
平野に入る。都心に近づくと交通量がドッと増え、ひたす
ら流れに乗ってR4を南下。13:30、無事浦和に到着。
総走行距離2,074Kmであった。ご苦労。

編集後記
今曝Nの夏もこうやって、無事終わったのだが、それにして
も時速80Km/Hで走る事がこんなに面白いものとは今まで
気づきもしなかったけど、面白かったね。行く手の雲の具
合が見え、道を横切る蜻蛉を追いかけ、灼熱の太陽の下
で喉を乾かしながら延々80Km/Hで走っていくのは、端か
ら見れば阿呆そのものでしょうが、やってる本人は結構、
それが夏の旅やと喜んで走っている訳です。

時期的には立秋も過ぎているので、日一日と秋の気配が
近づいてくるのも感じていました。テントから夕暮れの空を
眺めていると昼間の入道雲のかなた上には、鰯曇がちら
ほら見えているっていうのは何度も見たしね。

林道の中やキャンプ場でも結構、地元の人と収穫の話な
んかができて、やはり神戸ナンバーのオフ車って言うのが
効果てきめんやったんでしょうかね。こっちから話し掛けな
くても話し掛けてくる人が多かったですから。
これは当分止められまへん。

それにしても東北は広いし人が居ないな、それは実感しま
したね。観光地以外は人も少ないし、キャンプ場なんかで
も結構静かな所が多かったしね、まあ一部には夜中に花
火やったりする馬鹿者がいましたが、ああいう奴等は中州
でテント張って川に流されて欲しいモノです。

まあ当分、RMXでの80Km/Hでの旅は止めらそうにありま
へんワ。


 

     


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