英蟯虫&藍子:コラボレーション 第2弾 『祈る、哀しき獣』

*後に「Happiness Is A Warm Gun」に改題 [未完]

 

  1

  

南野陽一は市役所の一階にある公衆電話から園部明美の働く事務所に電話をかけた。電話を取った若い女の子から明美にはすぐに転送された。受話器の向こうから明美の明るく弾んだ声が聞こえてきた。「携帯電話にかけてくれてもいいのに、今日はどうしたの。そうか病院かそんなところなのね、きっと。携帯って何処でも使えるようだけど結構使えないところもあって便利な様で不便だものね。今日は期末でもないのに忙しくてお昼もまだ食べていないのよ、今週は先生が出張していてね、その分私の所に色々と回されてくるのよ。ああ、ご免なさい。また私ばっかり喋ってしまって。だってこんな感じで話せる相手ってもうあまり居ないのよね。気楽じゃない人ばかりで」

陽一は電話の後で市役所から商店街まで歩いて明美と待ち合わせした時間まで本屋で時間を調整することにした。本棚に挟まれてパラパラと本をめくっていた

「ああ、やっぱりここだった。多分そうだと思って来てみたの。お腹ぺこぺこだから何か食べに行ってもいい?」

二人は本屋を出てすぐ近くのピザ屋に入った。屋根の形が赤い帽子の形をした世界の何処にでもあるピザ屋のチェーン店だった。

「御免なさい、せっかくだけど。少しはゆっくりは出来るけれど、また事務所に戻らないといけないのよ。今週は家に寝に帰るだけ。ほとんどそのまんまの格好で寝て、朝ギリギリに起きてシャワーだけ浴びて事務所に行くのよ。まぁ期末と同じような感じだから平気だけど今頃は本当は暇なんだけど今週は特別ね。」

 

 自分のこの様な感情を陽一は自ら判然と出来ず、敢えて文字に表すとしたら「月を仰ぎ見て、ただ祈る」と不定期の日記に記している。

色白で可愛かった妹ももう二児の母親となり専業主婦として段々と厚かましく大胆になっていた。陽一の嫌うタイプの中年の主婦になりつつあった。専業主婦が悪いとは思わないが何でもかんでも簡単に頂戴していくそんな性格が嫌いだった。家計を守る主婦だからこそ大胆に厚かましく生きるしかないのだろうがそう変貌してく自分の妹の姿を見ていくのが嫌だった。義理の弟、つまり妹の夫にも申し訳ないような気がした。つまり自分の夫は能力が低くて年収が低いのでなんとか助けてよ、言っているようにも見える。母親はやはり実の娘が可愛いので妹が実家に帰る度に帰る際には近くのスーパーで買ってきた野菜や肉を手土産として持たしたり、白封筒に現金を包んで差し出したりしていた。一度陽一は見るに見かねて妹と姪っ子達が帰った後で母親に言った事がある。野菜や肉や果物を持たすのはわかるが、現金を持たすのは同じ主婦としておかしいのではないか、金に困っているのであれば仕方がないだろうがどうせ無駄使いに回されるに決まっているだろう、こんな主旨の事を言ったりした。